Lesson 3-2 上半身の経絡

人間の身体には「気が流れる道」である十二の基本経絡があります。どれも実際の施術で使われるため修得しておきたいものです。

本カリキュラムでは上半身①〜⑥の経絡と下半身⑦〜⑫の経絡に分けて説明していきます。

上半身の経絡

前述したような不調状態を防ぐためや人体への効果別に上半身の経絡を見ていきましょう。

①大腸経(だいちょうけい)

人体から排出されるものの一つに糞便があり、健康な腸内環境だと便に含まれる水分が適量で、ある程度固形化されています。ですが大腸の働きが悪いと下痢便秘といった状態が起こります

このような症状の改善、予防に効くのが大腸経です。経路を流れる気は手の人差し指の親指側の横から肘を過ぎて体幹部へ向かって流れていきます。この経絡から、手首の痛みや、炎症、肘、肩の痛みなどの症状にも効果があります。

②小腸経(しょうちょうけい)

小腸には食物を栄養に転換し、消化吸収する働きがあります

心と体の健康は食事からと言われるように、しっかり栄養を摂ることは大切です。しかしいくら体に良い物を取り入れても、それを消化吸収する機能が働いていないと意味を成さないため、小腸経の調整が重要になります。小腸の経路を流れる気は手の小指の外側から始まり体幹部へ向かって流れていきます。この経路から大腸同様、手首の痛みや、炎症、肘、肩の痛みなどの症状にも効果があります。

③三焦経(さんしょうけい)

東洋医学と現代医学で説明されている臓腑には、働きの違いに多少の違いはあっても、互いに対応するものはあります。ですが、三焦という臓腑は現代医学には存在していません。ですから「三焦」は東洋医学独自の身体観による臓腑という見方をしてください。

三焦には体内を循環する水液の代謝に関係するという部分と体温調整を行うという働きがあります。尿量の調節や発熱など、熱にからんだ症状に効果的です。また、三焦は、上焦、中焦、下焦の3つに分類され、内臓全体が正常に機能するための役割を持ちます。三焦の経絡を流れる気は、手の薬指の小指側から体幹部へ向かって流れていきます。

④肺経(はいけい)

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肺経には呼吸を整え、正常な身体活動を支える働きがあります

肺の機能が弱ると呼吸が浅くなる、胸苦しい、息苦しい、咳が出るなどの症状や気管支炎などの病気になる恐れもあるため肺経の調節が重要になります。肺の経絡を流れる気は、肺を中心にして胸から腕、手のひらから親指へ向かって流れていきます。

⑤心経(しんけい)

心経には、心臓と心のエネルギー、全身を巡る血の流れを調える働きがあります

心経上にある「神門」という経穴は、心経の原穴(基本穴)であり、神門の「神」は、精神的なエネルギーを持つとされていることから、神門への施術は精神的なエネルギーの乱れを調節する効果があります。心の経絡を流れる気は脇の下からはじまり、手の小指に向かって流れていきます。

⑥心包経(しんぽうけい)

東洋医学でいう、心包とは、心臓の動きを司りまた保護している働きを持つと言われています。その働きは、心臓の周辺に外邪(がいじゃ:『風、寒さ、暑さ、湿気』など外から体に影響を与える要素)から守る膜が存在すると考えられており、その膜が心臓を保護する役割を担うと言う考えです。「心包」は「三焦」と同様に、実在しない臓腑で、身体観における働きだけの存在です。

施術の際は、「心」と「心包」を同様に行うと効果的と言えます。心包の経絡を流れる気は胸中からはじまり、手の中指に向かって流れていきます。