ひとくちに整体といっても、様々な手法・理論があります。冒頭で解説したように、整体にはこれといった決まった理論があるわけではないのです。
整体法が始まったのは19世紀の初め頃と言われており、そのベースは中国の推拿(すいな)と言う古典按摩(こてんあんま)が進歩したものと考えられています。古典按摩には2000年以上の歴史があり、この技術が日本へ渡り、カイロプラクティックやオステオパシーなどの西洋技術と融合しながら、現在のような整体術・整体法として徐々にまとまりを持ってくるようになりました。
明治44年に按摩術、大正9年にマッサージが免許制になり国家資格者しか行えないある種画一的な技術になっていく一方で、西洋医学一辺倒の考え方に反発した多くの整体師の影響で、整体術は免許制にはなりませんでした。
また、もともと解剖学的な機能を重視する西洋医学と異なり、東洋医学をベースとする整体は人々の経験則を重視する傾向があります。
そのため整体法にはそれぞれの整体師の主観が入る部分が大きく、現在になっても統一的な理論や方がなく様々なバリエーションが出るようになっているという背景があります。
整体の全体像
そのような整体の全体像を掴み、自らの技術に生かすには一つの理論を学ぶことでは難しくなります。
様々な理論が分かれているどの分野にも共通することですが、基本の「原理」を知った上でそれぞれの考え方をバランスよく学ぶことで、それぞれの理論で表現したい本質が徐々に見えてきます。
整体というと「ゆがみを治す」というイメージがある方も多いかと思いますが、整体師の中でも「そもそも人体はそれほど歪まない」「歪みが一番の原因だ」というように意見が分かれるポイントなのです。
この際に、どちらか一方が正しく、どちらかが間違っているという考え方をすると整体のイメージはつかみにくくなります。どちらもそれぞれの観点から見れば正しい場合があるのです。
整体は「自然治癒力を生かす」ために全体としての精神も含めた身体を整えることを目指しています。したがって、部分部分だけを見て何をしたらいい、これはダメ、というように捉えられるようなものでもなく、腰が痛かったらこのツボを刺激すればいい、というような単純なものでもありません。
西洋医学的な、インフルエンザになったらこの抗生物質、というような対応関係になれてしまっている私たちにとって始めはとっつきにくいと思いますが、辛抱強く全体像を感じるようにすることが整体を理解する大切なポイントです。
それでは、さっそく様々な考え方を学んでいきましょう。