Lesson 8-1 クライアントとの接し方

危険な施術

施術者の中には「◯◯技法」であれば、誰にでも、どんな症状にも効果が出ると思い込み、治療を施す方がいます。ですが、その技法が施術を受ける方の身体に合わない場合、効果が出ないばかりか、症状が悪化してしまう危険性があります。

また、Lesson3-4の経穴調整実践で学習した圧の加減や角度の調整といった顕著な技術だけで効果を得ようとする教科書通りの意識では期待できません。

施術における技術は必要ですが、その技術の効果を発揮させるためにはまず、「相手の身体と向き合い対話すること」が大切です。治療するにあたって、クライアント一人ひとりの状況を見定めて、それぞれに応じて治療に変化をつけるということです。

これは新規のクライアントだけでなく、リピーターにも同じことがいえます。前回の施術で効果が出ていたとしても、同じ人だからという理由で全く同じ施術をするのは、施術の経過による身体への影響を考えていないということになります。

 

身体の状態を知る

前述したように、教科書通りの意識はトラブルの危険性があるということをお話しましたが、クライアント一人ひとりに合った良い施術を行うにはまず情報が必要になります。その情報収集のための4つの診断方法を見ていきましょう。

①問診

ここでは、クライアントの言葉から情報を集めます。質問事項は、身体で不調に感じること(例えば、便秘、偏頭痛、食欲不振)、生活習慣、ライフスタイルなどです。クライアント本人が感じる不調は来店の動機となるもっとも治したい症状と考えられます。症状が分かれば、好転に効果のある経絡やその人に合った施術内容が検討できますね。

②視診

視診は、文字通り目視で情報を集める診断方法です。

立った姿勢で鏡の前に立っていただき、両肩の高さ、首の傾き、骨盤の傾き、体のねじれ、前傾気味等の身体全体のゆがみを観察します。視診で大方の調整すべき点が見えてきます。

③動診

動診は実際にクライアントに動いてもらい情報を集める診断方法です。

立った姿勢で前屈、後屈、左屈、右屈、左廻旋、右廻旋の順に動いていただき、自然に振る舞っている姿に狂いを感じる部分があるかを観察します。視診で身体のゆがみが感じられない場合でも、動診によってバランスが取れていないケースがあるので、症状の見落としを防ぐ意味でも必ず診断したいものです。

④触診

問診、視診、動診で得た情報を基に、直接身体に触れて症状の程度を確認します。

ここでも、教科書通りの意識で確認するのではなく、その症状の好転に関係する周辺の経絡や経穴なども含め、広い範囲で確認することが大切です。たとえば、猫背に代表される背骨のゆがみは、筋力バランスの歪みで起こる場合もあれば、内臓系の不調が原因で起こる場合もあるので、クライアントの身体を知る上では特に重要な診断方法と言えます。